インディー(71)

「勤め先のコートドールに首切られるわ、保険に入ってなかったもんやから、治療費を実費で払わんといかんわで大変なんですよ」


「で・」

「ちょっとお願いしづらいことなんやけど・」

「給料2か月分くらいを前払いしてやってほしいんですよ」

(なんとも厚かましい・)


しばしの沈黙


「わかりました。」
とハセさん。


決断が早い。

(オレの顔があったればこそ、とも思う)


「ただ、私も彼を一度しか見ていないので、直接、彼に会って確かめたいことがあります。今、どこの病院にいるのですか?」


「梅田のトガノ病院です」

「それじゃ、あすの午後、私が直接、会いに行きましょう。治療代も明日、用意しておきます」

「ほんまですか!ありがとう!すぐにヤベに電話しますわ!」

「右手のけがはどれくらいなんですか?」

「まだ、吊っている状態なんですが、片手でも働け!とゆうてあります。後、頭を10針縫ってますんで、髪を伸ばして隠すまでしばらくかかるかと・」

「それと、太ももにも傷があるので、まだ少し引きずって歩く感じです」


「ハハハッ、それじゃ、しばらく店には立てない!」

「わかってます」

「まあ、いいでしょう。先物買いということで。彼には、何か人を引きつける魅力がある・」

「ありがとうございます。」


すっかり、気分が良くなって、水割りを二杯、三杯と立て続けに飲み干した。


(つづく)


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